STUDENT DECISION RECORDS

「考えすぎて動けなかった過去の自分を越え上京した彼は、なぜもう一度、大学祭へ戻ってきたのか」#SDR28-0047

INTERVIEW & TEXT

笹原 哲

2026.06.04

STUDENT DECISION RECORDS

ReWrite Career が出会った学生の「意思決定」を記録するメディアです。

学生プロフィール

北海道札幌市出身。現在は東京国際大学言語コミュニケーション学部に在籍している。

大学2年時に学園祭実行委員長を務め、コロナ後来場者数を約4000人規模まで復活させた実績を持つ。小中では周囲とのバランスを強く意識するタイプだったが、大学では「目的のために決める」「やると決めたらやり切る」方向へ大きく成長していった。

彼の特徴は、チームの気持ちをまとめる力もさることながら、勢いだけで押すのではなく、行動しながら全体を見るところにある。自分が当事者として走りながらも、同時に少し引いた視点で組織や自分の立ち位置を眺め、伝えるべきことを伝えつつげ、やるべきことをやり続ける。その視点があるからこそ、大きな決断を引き受けられる。

一人一人の人生に実績と意味を。

彼が大学祭で本当に成したいのは、イベントを成功させることだけじゃない。

組織にいる一人ひとりが、自分は必要とされていると感じ、同じ目的に向かってワクワクしながら動ける状態をつくることだ。来場者数や広報の数字の達成はもちろん、それ以上に重視しているのは、メンバーがこの経験を通して「力がついた」「やって良かった」と思えることにある。

【学生時代に成したいこと】

学生時代に成したいのは、大学祭を大学内外にしっかり認知される一番の大イベントまで引き上げることだ。2年生の時には来場者数を約4000人規模まで伸ばした実績があり、4年生で戻ってきた今は、さらにその先の規模も視野に入れながら、もう一段上の景色をつくろうとしている。 

ただ、彼にとって本当の意味で成したいことは数字だけじゃない。自分が卒業した後にも続く組織を残すこと、そして後輩たちが大学祭を通して自分の成長を実感できることだ。自分が評価されることより、周囲に「この経験が自分の力になった」と残るほうが大事だと考えている。

【その道を選ばざるを得なかった理由】

彼がこの道を選んだ理由は、環境を変えなければ自分は何も得られないという焦りが強くあったからだ。

北海道での大学生活では、高校時代の友人の活躍を耳にする中で、自身は既知の人同士のコミュニティの中で完結してしまう空気や、自分自身がまだ何も積み上げられていない焦りを感じていた。このまま同じ場所にいても、自分の視野も行動も広がらない。そう思った時、彼にとって東京へ出ることは挑戦ではなく、成長のために必要な決断になった。

そして大学で大学祭に出会い、多国籍なメンバー、コロナ明けの混乱といった難しさの中で、逆にまさに自分が向き合う意味を見出していった。非常に難易度の高い状況に向き合った時、彼はそこから距離を取るのではなく、「だったら自分が変える側に回る」と決めた。そう考える人間だったからこそ、この道を選ばざるを得なかった。


【原体験における共鳴ポイント】

彼の原点には、小学校時代に感じていたみんなでワイワイやる楽しさと、中学校時代に直面した人間関係の難しさの両方がある。楽しい空気をつくることが好きだった一方で、集団の中では簡単に人が傷つき、空気が崩れ、関係が難しくなる現実も見てきた。その両方を知っているからこそ、彼はただ盛り上げるだけではなく、人がどうすれば前向きに関われるかまで考えるようになった。

もうひとつ大きいのは、自分の好きな人としか関わらない状態への危機感だ。かつての彼は、合う人とだけ付き合い、リスクを取らず、悩んでは止まることが多かった。けれど、それでは社会のことを本当の意味で考えられないと気づいた。自分の価値観が違う相手とも向き合うこと、そこで逃げずに進むこと、その必要性を理解したことが、今の行動重視の姿勢につながっている。


【覚悟が定まった瞬間】

最初の覚悟が定まったのは、大学1年の終わりに職員から委員長就任を打診された時だ。

コロナ明けで引き継ぎも十分じゃない。組織も複雑で、まとめるのは簡単じゃない。それでも彼は、「ここでやらなかったら、東京に来た意味がなくなる」と感じた。環境を変えた以上、その場で何かを残さなければ自分は前に進めない。その思いが、2年生で委員長を引き受ける覚悟につながった。

そして、より大きな覚悟が定まったのは、4年生で戻ると決めた時だ。3年生で一度離れたあと、客として大学祭を見たことで、外から見るからこそ見える課題と可能性があった。来場者数の落ち込みや、解決できていなかった組織内の課題、だからこそまだまだ良くできるという実感。その時には、迷いよりも「今度は途中で終わらせたくない」という思いのほうが強くなっていた。

【捨てたもの】

彼が捨てたのは、安定した地元での生活と、考えすぎて動けない自分だ。

北海道での大学生活を離れ、親元を離れて東京へ出たこと自体が大きな手放しだった。大学では委員長として動く中で、プライベートの時間も削り、大学祭に重心を寄せてきた。やると決めた以上、中途半端に関わるくらいならやらないほうがいい。その感覚でここまで走ってきた。

4年生で戻ってきてからは、「嫌われたくない」という感情も少しずつ手放している。組織を良くするためには、全員に好かれることより、意思決定して目的に対して進めることのほうが大事になる。感情的なコミュニケーションだけに頼ることなく、目的に向かう判断を選べるようになったことが、今の彼の変化を象徴している。


【意思決定の軸】

「考えても無駄なら、まず動く」。

彼の意思決定の軸は、かなり明快だ。以前は悩んで止まることが多かったが、それでは何も起きないと痛感した。今は、やったことのないことや想像がつかないことほど、まず飛びついてみる。行動した結果から学ぶほうが、自分を前に進めるとわかっているからだ。

同時に、彼は「自分のためだけを考えていたら、逆に自分のためにならない」とも考えている。全体の利益や組織の目的を優先して動くことが、結果的に自分の成長にもつながる。その全体最適の感覚が、彼の行動力をただの勢いで終わらせず、組織を前へ進める力に変えている。


【現在の挑戦】

現在の挑戦は、大学祭をもう一度盛り上げること以上に、一人ひとりが必要とされていると感じられる組織をつくることにある。人数が多い組織ほど、役割が曖昧になり、誰かが孤立しやすい。だから彼は、ただ仕事を割り振るのではなく、「この人がここにいる意味」を本人が感じられるような関わり方を大事にしている。

さらに今は、次世代のリーダー育成も大きなテーマになっている。自分が卒業したあとも組織が止まらず、むしろ前へ進み続けるために、後輩が自分で気づき、考え、改善できる環境を整えようとしている。他大学との連携や広報強化も含めて、単年度で終わらない基盤づくりに挑んでいる。


【誰に、何を返したいか】

彼が返したい相手は、まず両親だ。

特に、北海道から東京へ出る決断を受け止めて送り出してくれた家族に対して、自分がこの選択でちゃんと成長できたことを形で見せたいと思っている。東京に来た意味を証明すること自体が、彼にとって大きな恩返しになっている。 

同時に、大学祭で関わってきたメンバーたちにも返したいものがある。それは「委員長ありがとう」という言葉そのものではなく、この経験を通して自分の中に力がついた、前より良い方向に進めた、と思える実感だ。彼にとって一番嬉しいのは、自分への感謝より、相手の中に成長が残ることだ。

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