STUDENT DECISION RECORDS

「サッカーの道を手放した彼が、大学サッカーに情熱を注ぐ理由」#SDR28-0007

INTERVIEW & TEXT

笹原 哲

2026.04.23

STUDENT DECISION RECORDS

ReWrite Career が出会った学生の「意思決定」を記録するメディアです。

学生プロフィール

京都大学3年、神奈川県川崎市出身。
現在、京都大学サッカー部で2部昇格を目指しながら、組織の熱量を揃える挑戦に取り組んでいる。
これまでのJリーグ下部組織で味わった挫折や、高校時代にサッカーを断って受験に振り切った経験から、
現在は「温度差のある集団を、どうすれば同じ目標に向かう組織へ変えられるか」という課題に向き合っている。

サッカー競技人生の集大成を、仲間と共に。

周囲がアルバイトや一般的な学生生活との両立を選ぶ中、彼は大学サッカーを“競技人生の集大成”として、チームを勝たせる側に立つ道を選んだ。

その背景にあったのは、「掲げた目標を、必ず達成する」というシンプルで強い想いだった。

“自分はこのまま、ただプレーするだけで終わっていいのか”

その問いから逃げなかった結果が、今の挑戦につながっている。

【学生時代に成したいこと】

今、彼が成し遂げたいのは、京都大学サッカー部を2部昇格という結果に導くことだ。
しかもそれは、ただ自分が試合に出て終わる話ではない。熱量に差がある集団の中で、1人ひとりが当事者として動く組織をつくり、そのうえで結果を出すことまで含めて、彼の挑戦になっている。
周囲にとって大学サッカーが学生生活の一部である一方、彼にとっては“サッカーに本気になれる人生最後の機会”であり、だからこそ「頑張ったで終わらせず、結果に残る成果を出したい」と考えている。

【その道を選ばざるを得なかった理由】

彼が普通の選択肢ではなく、あえてこの道を選ぶのは、“情熱を注ぐなら、達成までやり切りたい”という感覚が人一倍強いからだ。
大学には、学業やバイトや遊びなど、サッカー以外の選択肢がいくらでもある。
それでも彼は、「目標を掲げたのに届かなかったね、で終わるのが気に食わない」
という感覚を持っている。
ただプレイヤーとして所属しているだけでは意味がない。自分がチーム全体に貢献できる立場に立つことで、組織そのものに影響を与えたい。 彼はそう考えている。


【原体験における共鳴ポイント】

彼の原体験の核にあるのは、サッカーでは結果を出し切る前にその道を離れ、大学受験では結果を出し切ったという対照的な経験だ。

中学時代まで、Jリーグ下部組織という高い競争環境の中で、自分の限界を現実的に感じ、サッカーで結果を証明し切る前に、両立は難しいと告げられた彼は、自分の将来を見据えて学業を選び一度その道を手放した。
その帰り道、父親の車の中で号泣した。
それは、単にサッカーを辞める涙ではない。幼少期から人生の中心にあったものの一つを、自分の意思で手放す痛みだった。

高校ではサッカーではなく受験に振り切り、1日14時間勉強する日々の末に現役での京都大学合格を掴んだ。

ここで彼は、目標を抱え、それに全力を注ぎ、結果を出し切ることの手応えを知った。だからこそ大学では、サッカーをただ楽しむものだけではなく、今度こそ最後までやり切る対象として捉えている。結果に貪欲であること、その姿勢こそが、彼に大学でやり切る意思決定をさせている。


【覚悟が定まった瞬間】

彼の覚悟が定まったのは、大学で再びサッカーに戻り、「個人の成長」ではなく「チームの結果」に自分の熱量を賭けると決めた瞬間だった。
特に大きかったのは、学年内でリーダー役を誰が担うかという話し合いの場だ。
入部当初の彼は、どちらかといえば自分のプレーや成長に意識が向いていた。1年次から試合に参加し最前線で戦った。だが、目標に届かなかったシーズンを経験し、“このままでは終われない”という感覚が強くなった。
そこで彼は、プレーするだけの立場ではなく、組織を前に進める責任を引き受ける側に回る決断をした。
“なんとなくやる”から“最後まで背負ってやる”へ。
彼にとってその転機は、大学サッカーをただの延長線ではなく、人生最後の本気の勝負として定義し直した瞬間だった。

【捨てたもの】

彼がこの挑戦の裏で捨てたものは、軽くない。
ひとつは、“自分だけ納得できればいい”という終わり方だ。
サッカーでは、結果を出し切る前にその道を離れた感覚が残った。一方で受験では、目標を掲げて、やり切って、結果を出した。だからこそ大学では、「頑張った」で終わることを自分に許していない。

もうひとつは、気楽な学生生活だ。
体育会サッカー部に入ってから、競技だけでなく広報、動画編集、地域活動、対外調整など、組織運営の仕事に時間を投じている。
周囲が自由に使える時間を持つ中で、彼は「自分の時間を削ってでも、組織のために動く側」を選んだ。
この“自由”を捨てた重さが、彼の覚悟を支えている。


【意思決定の軸】

「最適解で選ぶ」

彼は感情だけで突っ走るタイプではない。
自分の適性、将来の可能性、今ある環境、その中で何に時間を投下するのが最も意味があるかを冷静に見ている。
高校でサッカーを続けるかを考えたときも、大学でどんな立場を取るかを決めたときも、彼の判断基準には一貫して「長期で見て、何が最も価値ある選択か」という視点がある。
だから彼の挑戦は、勢いではなく、考え抜いたうえでの覚悟として重みを持つ。


【現在の挑戦】

彼が今ぶつかっている最大の壁は、熱量の違う集団を、同じ方向に向かせる難しさだ。
大学サッカーはプロではない。報酬もなければ、強制力もない。
だからこそ、「勝ちたい」と本気で思っている人もいれば、学生生活の一部として関わっている人もいる。し、それらを否定したいわけでもない。
この温度差を前提にしながら、それでもチームを勝たせなければならない。ここに、彼の挑戦の難しさがある。

彼はその壁に対して、精神論ではなく、役割を与えること、関係性を深めること、本音でぶつかれる空気をつくることで向き合おうとしている。
ただ声を張るのではなく、ただ厳しくするのでもなく、「この人たちとなら頑張りたい」と思える組織をつくる。
彼が挑んでいるのは、勝敗そのものだけではなく、勝てる組織の設計でもある。


【誰に、何を返したいか】

彼が返したいものは少なくとも一緒に戦う仲間に対する“結果”であり、同じ方向を向ける組織をつくることそのもの。
単に昇格したかどうかだけでなく、最後に「このチームで本気でやれてよかった」
と思える状態をつくれたとき、彼にとってこの挑戦は報われるのだと思う。


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