STUDENT DECISION RECORDS

「“理不尽な指導も、全落ちした受験も、無駄にしない。彼が団体と仲間のために挑み続ける理由」#SDR28-0009

INTERVIEW & TEXT

笹原 哲

2026.04.27

STUDENT DECISION RECORDS

ReWrite Career が出会った学生の「意思決定」を記録するメディアです。

学生プロフィール

同志社大学商学部3年、大阪府出身。
現在、カンボジア支援を行う国際ボランティア団体「CHAD」の副代表として、130人規模の組織運営と次世代への意志の継承に挑戦中。
中学時代、理不尽な指導の中で心をすり減らした経験と、浪人時代に現実を直視しながら自分の選択に意味を与え直した経験を経て、
現在は「自分の経験を、自分のためではなく、誰かの挑戦を支える力に変えられるか」という課題に向き合っている。

意味を見出すと、現実も、人も変わる。

周囲が就活やサークルで“自分のための学生生活”を積み重ねる中、彼は130人の組織を支え、次の代に意志を残す副代表としての道を選んだ。

その背景にあったのは、「自分のためだけに頑張っていたら、この活動は自己満足で終わる」という再認識だった。

“今までの逆境に意味を与えるなら、それは自分のためだけじゃ足りないんじゃないか”

その問いから逃げなかった結果が、今の挑戦につながっている。

【学生時代に成したいこと】

今、彼が成し遂げたいのは、CHADという組織を、次の代らしい意志が乗った上で引き継ぐことだ。
そのために彼は、役職をこなすことだけでなく、さらに、後輩たちの中に「自分たちもこの団体を背負いたい」と思える意味付けを残すことを重視している。

彼にとっての成功は、引退の瞬間に称賛されることではない。
後輩たちが、「自分たちもこの先をつくりたい」「山地さんがいたから"気付けて"頑張れた」とふとした瞬間に語ってくれること。それが、彼の学生時代の到達点になっている。

【その道を選ばざるを得なかった理由】

彼がこの道を選ばざるを得なかった理由は、苦しかった経験を“ただの傷”で終わらせたくなかったからだ。
彼にとって過去の挫折は、忘れたい出来事ではなく、あとから意味を与え直し、今の勇気に変える力の源だった。だから大学でも、ただ目立つことや自分が成長した実感を得ることだけでは足りなかった。それでは、自分が乗り越えてきた時間に十分な意味を返せないと感じていた。 

CHADに入り、現地で子どもたちの笑顔に触れ、さらに先輩から「ボランティアは自己満足で終わったら終わり」という言葉を受け取ったことで、その感覚は決定的になる。
自分の挑戦を、自分のためだけに閉じないこと。自分が経験してきた痛みや遠回りを、誰かのために使って初めて意味にすること。
彼が副代表として組織を支える道を選んだ背景には、そんな強い意志がある。


【原体験における共鳴ポイント】

彼の原体験の核にあるのは、中学時代に、理不尽さの中で心を削られた経験だ。
バスケットボール部では、実力があっても、努力していても、正当に報われるとは限らなかった。理不尽な叱責や扱いの中で、彼は精神的に追い込まれ、一時は病むほど苦しんだ。けれど、その経験の中で彼は、ただ反発するだけではなく、「この出来事を自分はどう受け取るのか」「周囲との関係の中で何を学ぶのか」を少しずつ信頼を寄せる仲間の力も借りながらブレずに考えるようになっていった。

その力をさらに磨いたのが、大学受験での全落ちと浪人生活だった。
周囲が先に進んでいく中で、自分だけが取り残されたような感覚を味わい、彼は初めて真正面から現実を見た。ここで彼は、挫折を美化するのではなく、「自分は何が足りなかったのか」「この一年をどう意味あるものに変えるのか」を、自分自身の責任で考え続けた。
つまり彼は、環境や他者から意味を受け取るだけでなく、現実を直視したうえで、自ら意味付ける力を手に入れた。

そして大学時代、その力の使い方が変わる。
以前は、自分が這い上がるために、自分の挑戦を正当化するために使っていたその力を、今は後輩の背中を押すために、組織を前に進めるために、支援先の子どもたちに価値を返すために使おうとしている。
彼の歩みを貫いているのは、強さそのものではない。自身が過去に傷ついた経験さえ、誰かの意味に変えようとする姿勢である。


【覚悟が定まった瞬間】

彼の覚悟が定まったのは、CHADでの活動を“自分のための挑戦”として続けることに限界を感じた瞬間だった。
当初は、浪人した分を取り返したい、現役生とは違う大学生活を送りたい、でかいことをやりたいという気持ちもあった。だが、現地で子どもたちの表情を見て、先輩たちの言葉に触れる中で、彼の中で問いが変わっていった。
“自分が何を成すか”ではなく、“自分が何を残せるか”へ。

その変化の先にあったのが、副代表として組織を支える立場を引き受ける決断だった。前に出て評価されることよりも、後輩が動ける土台をつくること、組織を次につなぐことを選んだとき、彼の挑戦は“やりたいこと”から“背負うべきこと”へと変わった。
そこが、彼にとっての覚悟の瞬間だった。

【捨てたもの】

彼がこの挑戦の裏で手放したものは、自分の成長だけを目的にする見方だ。
浪人した一年を取り返したい、周囲に追いつきたい、自分を大きく成長させたい。そうした気持ちがゼロだったわけではない。けれど彼は、その視点のままでは自分の経験も活動も、結局は自分の中で閉じてしまうと気づいた。


【意思決定の軸】

「その経験を、誰の意味にできるか」 

だからこそ、彼は今、何かを選ぶときに「自分にとって得かどうか」だけでは判断しない。
この行動は後輩に何を残すのか、支援先にどんな価値を返せるのか、この経験は誰かの背中を押すものになるのか。
彼の意思決定の軸は、経験の価値を、自分の内側で完結させず、他者に渡せる形にすることにある。


【現在の挑戦】

彼が今ぶつかっている壁は、130人の異なる価値観を束ねながら、“意志”を次の代に渡すことだ。
支援に対する考え方も、活動への温度感も、人によって違う。その中で、自分の価値観を押し付けずに、なぜその行動が必要なのかを伝え、メンバーが自分の意思で動ける状態をつくらなければならない。

だから彼は、後輩との対話に時間をかけている。
ただ指示を出すのではなく、一緒に食事をし、時間を共有し話し、自分の考えや経験を丁寧に渡そうとしている。
彼が今挑んでいるのは、組織運営そのもの以上に、“意味はどうすれば継承できるのか”という問いなのだと思う。


【誰に、何を返したいか】

彼が最終的に返したいのは、先輩から受け取った価値観と景色を、後輩たちへつないでいくことだ。
自己満足で終わらないこと。相手視点で考えること。苦しい経験にも、自分で意味を与え直せること。
そうした考え方そのものを、彼は次の代に手渡したいと思っている。

そして彼にとっての成功は、引退のときに後輩から、
「山地さんがいたから"気付けて"頑張れた」
「受け取ったものを、自分なりにつないでいきます」
と言ってもらえることだ。
その言葉を聞けたとき、彼は初めて、自分の経験が“自分のためだけのものではなかった”と実感できる。


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