STUDENT DECISION RECORDS

「結婚式に呼べる仲間を、この場所で。彼が守りたかったのは、仕事ではなく人の居場所だった」#SDR28-0042

INTERVIEW & TEXT

笹原 哲

2026.06.05

STUDENT DECISION RECORDS

ReWrite Career が出会った学生の「意思決定」を記録するメディアです。

学生プロフィール

福岡県北九州市出身。中京大学心理学部に在籍し、中京大学祭名古屋実行委員会の委員長を務める。

彼の魅力は、ただ熱いだけではなく、人の気持ちや場の空気を繊細に受け取りながら、その場をもっとあたたかく、もっと意味のあるものへ変えていこうとするところにある。

目立つために前へ出るのではなく、みんなが自然に笑えて、自然につながれる景色を本気でつくろうとしている。

結婚式に呼べる仲間を、この場所で。

彼が大学祭に懸けているのは、イベントの成功そのものだけじゃない。

この場所で出会った仲間たちが、卒業したあとも続いていく関係を手にしてほしいと思っている。

結婚式に呼べる人、老後に一緒に中華料理を食べながら「あの頃は良かった」と笑い合える人、そんな“一生もののつながり”を、みんなに増やしてほしい。その願いが、彼の委員長としてのすべての判断の中心にある。

【学生時代に成したいこと】

学生時代に成したいことは、関わった人たちに「ここで出会えてよかった」と思える関係を残すことだ。

大学祭の活動を、忙しかった、しんどかった、で終わる時間にはしたくない。楽しかっただけでも足りない。その時間が、その後の人生を支えるくらい濃くて、あの時の仲間が今でも自分の中に残っていると胸を張って言えるような経験にしたいと思っている。

彼にとって理想の大学祭は、単なるイベント運営の場ではない。人が深く関わり合い、自分の居場所を見つけ、何年先も続く関係を持ち帰れる場所だ。だからこそ彼は、大学祭を「その場限りの盛り上がり」で終わらせず、人生の中で意味を持ち続ける時間にしようとしている。

【その道を選ばざるを得なかった理由】

彼がこの道を選んだ背景には、大学祭という組織にはもっと人を幸せにできる力があるはずだ、という確信がある。

300人もの学生が集まる場所なら、ただ仕事を回すだけではなく、人生の夏休みと呼びたくなるくらい濃くて、心から楽しくて、人と人とが深くつながれる時間をつくれるはずだ。彼はその可能性を本気で信じている。

だから彼は、与えられた形をそのままなぞるのではなく、「もっといい場にできる」「もっと人の記憶に残る組織にできる」と考え、自分がその役割に立つことを選んだ。もっと朗らかで、もっとあたたかく、もっと人の人生に残る景色をつくりたい。その前向きな衝動が、彼を委員長という立場へ押し上げた。


【原体験における共鳴ポイント】

彼の原点には、ずっと「人が安心していられる場所をつくりたい」という思いがある。幼い頃から、自分にとって本当に心をほどける場所を探してきた感覚があり、そのぶん、人がどこで孤独を感じるのか、どこで救われるのかに自然と敏感になっていった。その感覚が、今の「誰かにとっての居場所をつくりたい」という願いにつながっている。

その思いの背景には、幼い頃に近所で苦しい環境に置かれていた子の出来事を前に、自分は何もできなかったという記憶がある。あの時に残った無力感が、人の心や居場所について深く考えるきっかけになった。だからこそ今は、安心して楽しみ合い戻ってこられる場所をつくりたいと思っている。心理学を学んでいるのも、その延長線上にある。

また、高校時代のラグビー部での経験も、今の彼を形づくる大きな柱になっている。仲間と声を掛け合い中をやりながらも、練習や試合を全力でやり切る時間は、彼にとってかけがえのないものだった。強豪を相手に、チームとして2トライを決めたことを誇りとして語っているように、仲間と一緒にぶつかり、笑い、最後まで出し切ることの楽しさと熱さを、彼はラグビーの中で体に刻んできた。

だから彼が今つくろうとしているのは、ただ単に仲がいいだけの集団ではない。やるべきことに対しては全力で走り切れて、終わったあとに「あの時間、本気で良かった」と言える仲間がいる場所だ。大学祭を通してみんなに「結婚式に呼べる仲間」を増やしてほしいという願いの奥には、こうした原体験がまっすぐにつながっている。


【覚悟が定まった瞬間】

覚悟が定まったのは、大学祭実行委員会の運営のあり方により良くできる可能性を感じた時だった。2年生の時、ユーモアや遊び心を削ぎ落とした厳しい指導に触れた瞬間、彼の中でひとつの線が引かれた。

自分たちの仕事のための仕事を優先するより、文化祭に来てくれる人たちの満足や、参加する仲間の気持ちをまず大切に考える方ことが本来のやるべきことである。そう確信した時、「だったら自分がやった方がいい」と使命を感じ腹をくくった。彼の覚悟は、上に立ちたいという願望ではなく、関わる人々にとってもっといい景色をつくれると信じた責任感から始まっている。

【捨てたもの】

彼が捨てたのは、自分のためだけに使う時間だ。

もともと読書が好きで、何時間も没頭できるタイプだった。それでも今は、その時間を大学祭の仲間や組織に注いでいる。まとまった自由時間は減ったかもしれない。でも彼の中では、それは失ったものではなく、より大きな価値に変えている感覚に近い。

同時に、自分だけがメンバーから評価されたいという発想も手放している。自分が目立つかという軸ではなく、周りの人がちゃんと笑えているか、安心できているかを見ながら動いている。だからこそ彼の1年は、自分を削る時間ではなく、誰かの一生に残る時間をつくるための投資になっている。


【意思決定の軸】

「今を太く、生き切ること。」

人生やこの瞬間には限りがある。

だったら、後悔しないくらい濃く、真正面から、全力で楽しみたい。そういう感覚が彼の根っこにある。だからチャンスが来た時には、迷って立ち止まるより、自分が信じた方へ踏み出す。

もうひとつの軸は、口にした言葉に自分を追いつかせることだ。言った以上はやる、掲げた以上は形にする。

その積み重ねが、彼の信頼をつくってきた。理想を語ることに責任を持つ。その姿勢が、彼らしさそのものになっている。


【現在の挑戦】

現在の挑戦は、大学祭実行委員会の中にある部署の壁を越えて、組織全体をもっとつながりのある場所へ変えることだ。

これまでは部署ごとに仲良くなれても、全体としてはまだ距離が残りやすかった。だから彼は、全体レクリエーションを増やし、既存のボードゲームを工夫しながら、自然に会話が生まれ、関係が広がっていく仕掛けをつくっている。

彼がつくりたいのは、同じ組織に所属しているだけの集団じゃない。

部署を越えて名前を呼び合い、役職を越えて笑い合い、卒業したあともつながり続けるような関係だ。大学祭を成功させることは大前提として、その先にある“人と人との関係の深さ”まで本気でつくろうとしているところに、彼の挑戦の本質がある。


【誰に、何を返したいか】

彼が返したいのは、まず一緒に走ってきた仲間たちに対してだ。

とくに、ボードゲーム部署の時代から同い年で責任者を務めてきた相棒の存在は大きい。その相棒に最後「お疲れ様」と言ってもらえることは、彼にとって自分の1年がちゃんと届いた証になる。いちばん近くで見てきた人に、自分の挑戦を認めてもらいたいという思いがある。

そしてもっと広くは、この大学祭に関わった全員に対して、一生ものの関係と安心できる居場所を返したいと思っている。彼が返したいのは、単なる楽しい思い出じゃない。何年経っても「あの場所があったから今の自分がある」と思えるような、人生の支えになる時間そのものだ。


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