STUDENT DECISION RECORDS

「脇役」の矜持が変えた組織の景色 ― 所沢キャンパス祭、会計幹部・桑名心音の挑戦  #SDR28-0116

INTERVIEW & TEXT

冨田 裕史

2026.07.30

STUDENT DECISION RECORDS

ReWrite Career が出会った学生の「意思決定」を記録するメディアです。

学生プロフィール

早稲田大学人間科学部に在籍し、所沢キャンパス祭実行委員会で会計幹部を務める。

幼少期は控えめで目立つことを好まなかったが、陸上競技やソフトボールを通じ、自身を成長させるための「悔しさ」との向き合い方を学んだ。

高校時代には投手として壁を感じた際に、フォームを根本から変える大胆な決断を下し、克服、成功体験を掴む。この体験が自ら能動的に決断する大切さを彼女にもたらした。

現在はその経験を糧に、学園祭運営において資金獲得から管理・組織改革までを担う。自身の成果だけでなく「次世代に残る仕組み」を作ることを重視し、周囲の立場に立った対話を軸に、組織のポテンシャルを最大化させる挑戦を続けている。



かつて、運動会の主役よりも脇役を好み、目立つことに臆病だった少女がいる。千葉県我孫子の田園風景の中で育ったその少女は、やがて早稲田の地で、組織の「舵取り」を担うリーダーへと変貌を遂げた。

彼女が変えたのは、単なる数字ではない。組織の「当たり前」という硬直した仕組みそのものだ。なぜ彼女は、あえて厳しい役割に身を置き、組織を変えようとするのか。

その決断の裏側には、過去の挫折から得た「不完全燃焼感」を、確かな成長へと昇華し続けてきた軌跡がある。

【学生時代に成したいこと】

桑名が目指すのは、個人が一時的な成果を上げる組織ではなく、誰が担っても高いパフォーマンスを発揮できる「仕組み」の構築だ。

学園祭という期間限定のプロジェクトにおいて、彼女は自身の任期中に結果を残すことはもちろん、次の代がより働きやすくなるような環境を整えることに腐心している。

彼女が成したいのは、自分の実績を残すこと以上に、自分が去った後も組織が健全に、かつ熱量高く回り続けるための土台を築くことである。

【その道を選んだ理由】

彼女が「会計」という重責を担う道を選んだのは、偶然ではない。

かつて渉外局として資金を稼ぐ側の過酷さを知った彼女は、稼ぐ側と管理する側の認識のギャップが、組織の可能性を阻害していることに気づいた。「資金を獲得する努力」と「それを最適に運用する知恵」。その両方の視点を持つ自分だからこそ、組織の血液である予算を、より戦略的に使えると考えたのだ。

誰かがやらなければならない「管理」という領域に、あえて自ら飛び込むことで、全体最適を図る道を選んだ。


【原体験における共鳴ポイント】

幼少期、彼女の原動力は「潜在的な対抗心」にあった。5歳上の兄との対決、そして周囲の優秀な友人たち。

負けず嫌いな彼女は、羨望を嫉妬に変えるのではなく、「近づくためには何をすればいいか」という問いに変えてきた。

その素直な向上心が、彼女の価値観の根底にある。どれほど高い壁があっても、それは「越えられないもの」ではなく「越えるための課題」として認識する。

その思考プロセスは、現在の組織課題に向き合う姿勢と完全に一致している。


【覚悟が定まった瞬間】

それは、ソフトボール部で投手としてどん底を味わった高校時代の夏だ。

コントロールが定まらず、チームに迷惑をかけ続けているという罪悪感に押しつぶされそうになっていた。しかし、彼女は逃げなかった。

お盆休みという短い期間、フォームを根本から「ワンステップ」から「ツーステップ」に変えるという、勇気ある決断をしたのだ。

結果、コントロールは劇的に安定し自身でも納得のいく投球ができるという自信を手に入れた。

この成功体験が、彼女の「現状に満足せず、本質的な改善を追求すれば道は開ける」という揺るぎない覚悟を定めた。


【意思決定の軸】

桑名の意思決定の軸は、徹底して「周囲の立場に立つこと」にある。

彼女はトップダウンで命令を下すリーダーではない。仕事を任せる際、ただ指示を出すのではなく、その背景や意図を丁寧に伝え、相手が主体的に動ける文脈を整える。

自分がどう見えるかではなく、どうすればメンバー全員が力を発揮できるか。常に「他者の視点」を組み込む柔軟さが、彼女のリーダーシップを支えている。

にこやかで柔和な笑顔と共に。


【現在の挑戦】

いま、彼女が向き合っているのは、組織の細部を支える「会計係」の育成だ。

かつては一人のトップに依存していた会計業務を、全局に会計係を配置する体制へと変えた。これにより組織全体の透明性を高めたが、新たな挑戦は「会計係が機能する文化作り」だ。

月一回の会議を設け、予算管理、実施の意義を伝え続ける。一見地味な活動だが、これが組織の健全性を守る最前線であると信じ、彼女は泥臭く対話を重ねている。


【誰に、何を返したいか】

彼女がこの挑戦を続ける理由はシンプルだ。

自分を支えてくれたチームメンバーや、これまで協力してくれた仲間への恩返しである。引退の際、彼女が望むのは称賛ではない。

後輩たちから「桑名さんが作った仕組みのおかげで、私たちはやりたいことに集中できた」という言葉だ。自分が結果を独り占めするのではなく、関わるすべての人を「主役」にすること。それこそが、かつて脇役を好んだ少女が辿り着いた、真のリーダーシップの姿である。

桑名なら、柔和な笑顔と共に必ず実現するであろう。

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